医学の小部屋

カロリス

2010/12/08

 ~知っていますか?カロリーリストリクション~

 カロリーリストリクション(カロリス)とはカロリー制限のことで、近年、長寿とカロリー制限が注目されています。
 これまで、カロリー制限による寿命延長は、線虫、ショウジョウバエ、マウス、魚、原生動物などさまざまな動物で報告されています。
 昨年、有名科学雑誌サイエンスにカロリー制限が、アカゲサルの病気の発症をおくらせ、死亡率をさげ、寿命をのばすというおどろくべき報告がなされています。そのなかで、興味深いことに、がん、糖尿病、動脈硬化などの発症が抑制され、脳の特定部位の委縮が抑制されていることが、MRIにより判明しています。
 ところで、カロリー制限で活性化する長寿遺伝子にSir2があります。哺乳類ではSir2ファミリーの遺伝子は、Sirtuinファミリーを形成し、SIRT1からSIRT7まで7種類のメンバーが存在します。これまでのところSIRT1が長寿形質に関してSir2の相同遺伝子と考えられています。
 さて、実際のカロリスですが、65~70%カロリー摂取への減少と定義されています。
 人でのカロリスの実践については、米国Roy L Walford博士によって提唱され、同博士によりCRON食(calory restriction with optimal nutrition)という用語が作られました。
 カロリスの開始にあたり、まず、現在のカロリー摂取量を判定する必要があります。必要エネルギー量をHarris-Benedict式などで算出し、以後1週間に0.45kg程度の減量をめざすこと。詳しくはRoy L Walford博士はそのホームページwww.walford.com でカロリー制限高栄養食のレセピーと栄養価計算ソフトを出していますので参照ください。
 おしまいに、フランス人には心血管病変がすくないことから、“フレンチパラドックス”と言われてきました。フランス人は赤ワインを飲む習慣があることはよく知られています。赤ワインにはポリフェノールの一種レスベラトロールが含まれ、その抗酸化作用により心血管病変が抑制されていると考えられました。さらに、レスベラトロールにはSIRT1を活性化するという報告があり、今後の研究が楽しみです。

~平成記念病院 内科 佐藤 宏~