医学の小部屋

ホルモンのおべんきょう

2011/02/17

 年齢を重ねると、性ホルモンは減少していきます。
  女性では、エスロトゲンが、男性ではアンドロゲンが加齢により低下していきます。
  女性は、更年期になるとエストロゲンが低下し、閉経後、骨粗鬆症や脂質異常、内臓脂肪の蓄積をきたし動脈硬化性疾患が増えてきます。また、エストロゲンの低下により、膣粘膜は菲薄化し、潤いが無くなり、脆弱化し膣炎をきたします。
 また、更年期になると更年期障害がみられます。更年期障害では、血管運動神経障害(のぼせ)、精神神経症状(不眠、憂鬱)、運動神経症状(肩こり、腰痛)などがみられます。更年期障害症状の重い場合や萎縮性膣炎ではHRT(ホルモン補充療法)が適応となります。
 最近の報告では50歳代でHRTを開始されれば、心血管系疾患を抑制する傾向があるといった好ましい結果も発表されています。
 男性でも、アンドロゲンは中高年になると低下していきます。最近の研究では、男性ではアンドロゲンが血管保護に働くと考えられています。アンドロゲンのうちテストテロンの低値が心疾患の危険因子であることが分かっています。
 50~91歳の高齢男性894人を対象としたThe Rancho Bernardo study(2008)ではテストステロンの低い群は高い群に比較して総死亡率が40%上昇していたことが明らかになりました。主な死因は、心血管疾患および呼吸器疾患であったようです。
 女性同様に、男性においても、アンドロゲン低下によりHDLコレステロール低下、中性脂肪増加、インスリン抵抗性増加や内臓脂肪増加がみられ、メタボリックシンドロームとの関係も見受けられます。
 今のところ、メタボリックシンドロームや生活習慣病で、ホルモン補充療法がおこなわれることはありませんが、将来、アンドロゲン補充療法が本邦でも行われる日も近いと考えられます。

~平成記念病院 内科 佐藤 宏~