健康教室

おなかの病気について

2014/08/12

 平成26年7月16日、講義室にて、平成26年度第1回健康教室が行われました。今回は、「おなかの病気について」と題し、佐藤先生の講演を行いました。
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       お話される佐藤先生             大勢の方に来て頂きました!
        
~以下、講演内容です~

1、進歩したC型肝炎の治療
1990年にC型肝炎ウイルスは発見され、わが国では1992年よりインターフェロン治療が行われてきました。2004年ペグインターフェロン+リバビリンの治療が登場し、2011年にテラプレビル、2013年にはシメプレビルが開発されましたが、インターフェロン不適応患者や治療抵抗性の1b・高ウイルス群ではウイルス消失(SVR)は50%に届きませんでした。ところが、2014年に入り、直接ウイルス阻害剤(DAA)を併用することにより、SVR80%以上となることが有名医学雑誌(NEJM)で発表され、大きな話題となりました。わが国においても、様々な治験がなされ、この秋、ついにDAAによるインターフェロンフリーの治療ができることとなりました。これまでの治療で治らなかった患者さんには大きな福音となるでしょう。

2、慢性胃炎を治療する
以前より、日本人には胃が悪い人が多いなどといわれてきました。事実、日本人には胃がんが多く、これは人種的なもののように思われてきました。しかし、近年の研究により、胃がんは萎縮性胃炎を母地に発生することが多いことが明らかとなりました。慢性委縮性胃炎(慢性胃炎)は、現在ではヘリコバクター・ピロリ菌による胃粘膜の慢性炎症の結果と考えてよいと思われます。すなわち、ピロリ菌の除菌が慢性胃炎の治療となり、ひいては胃がんの予防となるのです。ピロリ菌の検査は、内視鏡を使ったもの(迅速ウレアーゼ試験、鏡検法)と内視鏡を使用しない方法(血中、尿中抗体法、尿素呼気試験)があります。いずれも1時間ほどで結果を知ることができます。

3、粘膜下層剥離術(ESD)
2cmを超えるような早期胃がん、大腸がんに対しては、これまで手術が行われてきましたが、2006年にESD (粘膜下層剥離術)がわが国で保険適応されるようになり、今や多くの消化管の早期がんはESDで治療され、手術を回避できるようになってきました。しかし、早期がんは無症状であることから、その発見には健診が重要です。当院ではできるだけ健診を受けていただきますよう、お勧めしております。万一、見つかった場合はESDを含めた治療のご相談をお受けしております。

4、最近の抗がん剤治療
これまでの抗がん剤は、がん部だけではなく、正常な組織にも作用し、その結果、骨髄抑制、嘔吐、脱毛などの強い副作用があるのが通常でした。ところが、分子生物学、遺伝子工学の発達により、がんに過剰に発現している特異的な分子やがんが増加するのに必要となる分子をターゲットにした、ピンポイントの分子標的療法が主流になりつつあります。副作用もかわりつつあり、皮疹や心臓病など特有の症状が見られます。現在、消化器病分野では、大腸がんへのセツキシマブ、ベバシズマブ、胃がんへのラバチニブ、膵がんへのエルロチニブ、肝がんへのソラニフェブなどが使用されております。今後、さらに新薬が開発される分野だと思われます。

*参加して頂いた方からは・・・
 ・「映像があり理解しやすかった」
 ・「あまり健診を受けていないので、ピロリ菌の検査を受けたいと思います」
 ・「症状と治療方法等、細かい説明で日常生活習慣に留意すべきことを感じた」
 などの感想を頂きました!
 今後も継続して健康教室を開催する予定ですがので、皆さんぜひご参加ください☆